【新しい】新しい単位 世界単位認定協会

新しい 新しい単位 (扶桑社サブカルPB)

新しい 新しい単位 (扶桑社サブカルPB)

きっかけ
ブックオフにて400円で購入。またしても100円の本じゃなくて、どうもブログタイトル・企画から離れつつあると最近感じる。
前々から気になっていたのだけど、すでに持っている"新しい単位"が、増刷になり表紙などの色を変更したのかと思っていた。しかし、2冊とも並んでいるところを見て、中身を見るとどうも知らない単位がいくつかあり、載っているとばかり思っていた単位が載っていなかった。続刊があったのだと分かり購入した。
さて、なぜこの本が気になったかというと、かなり昔の話になる。僕が大学生の頃なので、7、8年前のことになる。たまたま見た深夜のテレビ番組"世界の単位"が非常におもしろかったからである。本来はBSフジで放送していた番組とのことで、なぜそれが地上波で放送されたのかは謎のまま。
あまり内容は覚えていないが、き○たまという文字が映し出され、この○に当てはまる文字はなんだというクイズがあった。しかもヒントつきで。そのヒントは、非常に大事なものという。当然、あれを想像するのだけど、正解はきもったま。○だからといって一文字とは限らないということか。
そして、2問目。おなじく、き○たま。ヒントは、棒の先に玉があり、毛がふさふさしているという。今度こそ、アレかと思うわけだが、正解は、きりんのあたま。やられた。
そんなつかみを置いておいて、世界の単位の1冊目(オレンジの方)の内容はナレーションと下手うまい、味のある絵で紹介されていく。くだらない内容だが、そういうものこそおもしろかった。
その1週間後くらいに、当時の僕にしても珍しく、新刊として購入したのだった。


ネタバレ・あらすじ
「速さや大きさに単位があるように、緊急事態やあっけなさにも単位が欲しい」という哲学のもと、世界単位認定協会という謎の組織が、物ごとをはかる単位を決めていく。その単位認定の経緯、例としてある物事にはどのくらいの数値が記録されるのか、その物事に対する対症法や解説が淡々と大真面目に書かれている。そして、一応主人公の井上道夫の行動が描かれている挿絵が絶妙。
14個の単位と、それぞれ12の物事の数値例が書いてある。これだけでは、おもしろさとくだらなさがまったく伝わらないので、2つほど例を書いておく。
緊急事態を表す単位、Ott(オットット)。ビールが溢れ、思わず「おっとっと」と口にする緊急事態を、1Ottとする。手品ショーでステージにあげられそうになる緊急事態は、238Ott。我が子に「赤ちゃんはどうやったら生まれるの?」と聞かれる緊急事態は、4550ott。パラシュートが開かない緊急事態は、100000ottなど。
あっけなさを表す単位、i:(イー)。ショッカーが「イー!」と登場するもののすぐにやられるあっけなさを、1i:とする。年季の入ったおばあちゃんのお店で万引きするあっけなさは、200i:。我慢してたウンチをだすときのあっけなさは、790i:。犯人だと分かる役者のでているサスペンスドラマのあっけなさは。2030i:など。


感想・レビュー
1冊目ほどの衝撃はなかった。そして、もちろんテレビ番組で見たときほどの衝撃はもっとなかった。しかし、くだらくておもしろい。400円はちょっと高かったか。個人的には、ありきたりさの単位と例が1番好き。


そういうくだらない内容はおいておいて、すべての物事に単位が欲しいという哲学はすごいと思う。特にweb業界などでもちゃんと決められていないものをちゃんと標準化していこうとしている姿勢と似ていると感じてしまった。そして、なかなか統一されず使ってもらえない部分なども、掲載されているものの実際には使われていない単位と同じだと感じる。

アイズ 鈴木光司

アイズ (新潮文庫)

アイズ (新潮文庫)


きっかけ
鈴木光司は、リングを読んでからかなり好き。新刊で買うほどではないのだけど、毎回読むたびにやっぱりホラーが流行ったけれど、その中でも鈴木光司の作品は群を抜いていると思う。100円だったから、当然買った。


ネタバレ・あらすじ
鍵穴
主人公は松浦宏和。事業に成功して豪華なマンションを買った友人の大石の家に行くところから始まる。しかし、その大石のマンションのある町はどこか覚えのある風景だった。大石の家に着くと、その昔あこがれていた早苗に妻として迎えられる。
一緒に酒を飲み交わすと、話は昔の共通の友人、鳥居の話になる。3人して早苗に憧れ浪人してまで同じ大学に行こうと勉強した。しかし、遅れて入学したころには、早苗にはすでに彼氏がいた。その時の鳥居の落胆ぶりは尋常ではなく、大学にも来なくなり、2人で部屋に様子を見に行くと躁病の薬の副作用で亡くなっていた。その時にも早苗の写真をにぎりしめていた。鳥居の夢は、金持ちになって早苗を妻にめとることだった。
大石のマンションから帰る時に、松浦は大石にわざわざこの場所のマンションを買った理由を尋ねる。価格などの条件を言うが、それ以上に松浦にはこの場所が鳥居が死んだ下宿の場所なのになぜ?というのがあった。大石はそれを知らなかった。
ただ2人は、鳥居が死んでからも鳥居の夢を違う形で実現させる手伝いをしてしまった。そして、「また呼ばれちまったな」とつぶやく。


クライ・アイズ
辻村昭典は、ホテルの上層階の一室で女に猿轡をかませ、下半身を向かいのマンションの住人に見せるようにして罰を与えている。
向かいのマンションには、川瀬隆三が安芸子を愛人として住まわせていた。しかし、今日はいつもと違い安芸子が部屋にいなかった。少し出かけているのだろうといつものようにマリファナを吸い始める。その時、向かいのホテルの一室に安芸子の足らしいものが見えたので取り返しにいかなければと部屋をでた。
川瀬は辻村の部屋に乗りこんだ。いくらでも金をだすから安芸子を返してくれと64万を渡す。安芸子を連れて帰ろうとするが、死んでいることに気づく。これは本当は安芸子ではなくただのドールだった。辻村はストレス解消や性欲のために2時間借りる契約をしていたのだ。しかし、マリファナの作用も手伝ってか川瀬にはドールが安芸子ではないと認識できない。逆上して辻村を蹴り殺した。
一方、安芸子は愛人という地位にも生活にも嫌気がさしていたが、愛情がそれをはばんでいた。少し心配をさせてやるつもりで家をでたが、捨てられるのは嫌で部屋に戻った。マリファナの臭いがすでに充満していて、それにつられ安芸子もマリファナを吸う。ベッドの隆三に近づくと隣に女が寝ているのが見えた。自分に似ている女をつれこむという復讐にでたのでと思い込んだ安芸子は、キッチンから包丁をもちだし隆三を殺す。その後に前々から何度も思い立っては抑えていた自殺をするためにバルコニーにでる。
人形はその人間たちの行動を笑みを浮かべている。


夜光虫
川端光明は、想いをよせている倉田貴子をを誘い仲間と共にナイトクルーズにでていた。
ヨットでのトイレを終え、ポンプで洗い流していると便器の中にビービーだまが流れ込んできた。それは貴子に幼い頃に、ビービーだまを飲み込んだ友達の事件を思い出させた。そのビービーだまに嫌な予感を覚え、オーナーズルームに閉じこもったままの娘の真由のことを思い出した。
オーナーズルームを確認したが真由はいなかった。ヨットに乗っている誰もが真由の姿を見ていないので、落水という可能性も考えられた。と同時に船に乗せるのを手伝った人間が誰もいないので、そもそも船に乗り込んでいないことも考えられた。真由は実の父親にもなつかない子供で、それが原因で貴子とも離婚している。川端との結婚も真由との相性が問題だ。
真由の捜索は続いたが姿を発見することができず、ヨットで来た道を戻りながら海面に真由の姿を探すことになる。夜光虫に縁取られた青白い遺体を発見した。しかし、それは真由ではなく男の子だった。その時に貴子の携帯電話が鳴り、真由はヨットに乗らずに市場をうろうろしていたらしい。
携帯から聞こえる真由の「ずっとここにいたのに、見つけてくれないんだもん」という台詞は、男の声と重なった。


しるし
小学5年の由佳里は、家の臭気やクラス替えのショックで神経が過敏になっていた。夜中に胸の動悸で目が覚めることもあった。朝刊をとってくるのは、由佳里と弟の翔太の仕事だった。朝刊を取りに玄関をでようとしたところ、外に気配を感じて魚眼レンズから外を見ると帽子をかぶった男か女かわからない人が横切った。恐ろしさでその場に止まっていると、父親が起きてきて様子を見に行ってくれた。誰もいなかったが、表札には赤いマーカーでFと書かれていた。
母は、父を嫌い、父に似ている由佳里も嫌っていた。その分自分に似ている翔太を溺愛していた。母に嫌われても、いつか一旗あげてやろうと意気込んでいる父を由佳里は応援していた。
その後も由佳里の家の表札にだけ文字が書かれていた。Fの次はA。Aの次はT。FATという単語は太ったという意味で、いたずらだと考えられた。母親により上の階や隣家の人、はては父親までが犯人扱いされた。
しかし、表札の文字は続き、次にはEという文字が書かれていた。FATE、運命という意味。それから1週間後父親は、「自分の人生を生きろ」と由佳里にメモを残して家を出て行った。
18年が過ぎ、由佳里は父親と会うことになった。家族の近況を聞き、そして自分の話をはじめる。やはり父親はFATEから運命を感じて、好きな女と一緒に暮らす道を選んだのだという。そして、その妻も子供も亡くして由佳里に会いに来たのだと。父親は、5つ目のRという文字を知らない。そして、本当は3つ目と4つ目の間のHという文字も。父親から見せられた子供の写真はガンと戦っているときの帽子をかぶっている子供だった。最初のFという文字が書かれた日にレンズからみた子供だった。
父親のどの子供はいつか自分がガンで死んでしまうと知っていても生まれてきたくて、父親に頼んでいたのだった。気持ちをかためさせるためのFATHER、父親という6文字。



名波啓二は、栗太しのぶに誘われ映画を見に行った。映画の内容はとてもつまらないもので、ほとんどいい部分はなかった。しかし、後半にでてきた廃墟の映像からすごく興味を引いた。その場所は名波が小さい頃に過ごした場所だった。
名波は小さい頃の記憶が思い出せない部分がたくさんあり、母も本当のことを何も教えてくれなかった。父にも聞きたかったが、父は小さい頃に失踪したままだった。父は死んだことになったが、葬式の記憶もなかった。
しのぶに映画のことを聞き出し、その廃墟の場所を探しに行く。しのぶと廃墟に行ったが、自分の思い出の場所に触れているうちにしのぶの姿は見えなくなってしまっていた。この廃墟には思い出がたくさんあり、そこに住んでいた頃のおばちゃんや村の人を思い出していった。自分の家を発見した。その家での思い出のテープレコーダーを見つけたりして感傷に浸っていた。しかし、家の壁に塗りこめられた新聞を見つけて愕然とする。それは自分の生まれた日の日付だった。新聞にはその日記録的な雨があり、名波の家族がその土砂で死んだことが載っていた。
名波は自分が40年間もさまよっていたことを知る。


杭打ち
野末和己は、ゴルフとセックスに人生をかけていた。汚い商売もしながらも順調にお金をためていってゴルフコースに何度もでている。ある時、朝のゴルフコースの池で大きな矢で固定されたかのような男の死体を発見した。
しかし、新聞にはその死体や殺人事件の話は載っていなかった。警察に問い合わせてもそんな事件はなかったといい、さらに問い詰めるとあれは自殺ですよと説明される。背中に矢のささった自殺などあるはずはない、これは金になると感じた野末は事件について調べ始める。矢のことを思い出してネットで検索していると、それは陸上競技の槍だと分かった。
ゴルフコースで従業員に話を聞くが、どうもおかしい。誰もが背中にそんなものは刺さっていなかったという。緘口令がしかれているのかと疑うが、一緒に見たはずの瑞江も槍などなかったという。そのとき、ちょうどゴルフコースにはその死んだ男の妻が来ていた。話を聞きだせるとふみ、野末は送っていくことを申し出る。
車の中での話では、夫が自殺した理由は帰ってきた娘の借金が理由で会社がつぶれ、睡眠薬を飲み自殺したようだった。借金をした娘の話を続けて聞いていると、山中いちという聞き覚えのある名前がでてきた。今まで思い出したこともなかったが、それは野末が昔働いていた訪問販売の高額な英会話教材を売った客だった。そのまままとわりつかれたので、めんどくさくなり売り飛ばしたのだった。さらに聞くと、いちは槍投げの選手だったことが判明する。事件の話どころではなく気持ち悪い話ばかりきかされるので、野末はその妻を山に捨てて逃げた。
山を下りる野末は背中に違和感を感じ振り返ると、あの槍が自分に向かって飛んできているところだった。槍に全神経がいき、カーブを曲がりきれないスピードをだすようにアクセルを踏み続ける。


タクシー
雨の中、詳子はタクシーに乗った。運転手の携帯が鳴り、そのことは1週間前に交通事故が思い出された。事故の原因になった携帯電話に憎しみをこめ、さらに面白半分で死んだ久保田智彦に電話をかけた。遺品のダンボールにも事故の社内にも携帯電話はなかったが、今もどこかで鳴っている。そのとき、タクシーは目的地へのルートをはずれた。
ちょうど今入った道は久保田智彦と初めて会った道だった。ひったくりにあい、そのひったくりをつかまえるきっかけになった写真をとったのが久保田だった。それからモデルをやってくれとたのまれ、今まで関わったこともない人種とも交流しひかれていった。
すでに詳子は結婚していたし、久保田も離婚を経験していた。しかし、詳子の可能性を認めてくれる久保田と一線を越えてしまい、来年もこのサクラを見ようといわれ、今の主人と離婚することを決めた。
久保田との結婚を決め、その報告の写真を選んでいたが写りのいい写真が見つからなかった。
写真の在り処を聞くために智彦に電話したことで、彼が車をとめ、そこにトラックがつっこんできて死んでしまった。
電源を切ったはずの運転手の携帯に電話がかかってくる。そして、タクシーは目的地について、お金をはらうときにレシートと紙幣の間に写真が入っていた。こんなところに入れて忘れたままというはずはないのだけど。そのとき、運転手が声を掛けてきて、「あなたの大切な人は今もあなたのことを見守っています」と伝える。



桶狭間の戦いの最中で、櫓の上で死ぬまで戦うことを自分の上役が勝手に決めてしまった。下りるためのはしごも蹴落として篭城することになった。仲間は弓で死ぬし、逃げるために下におりたものも串刺しにされてしまい、敵が下を通るが、この櫓は戦力ともみなされずに無視されていく。ただ念仏を唱えて死を待つだけになった。
続いて、1947年。城の跡がある場所までいつのまにか、望月妙子は歩いてきてしまった。子供の頃の一家心中未遂や、その後にも1度自殺をしようとして自分の子供にとめられている。しかし、今回は嫁いだ家の姑のいじめなどに耐え切れなくなり、ついに本当に死ぬことにした。そして、念仏を唱えて首を吊る。
そして、現代にうつる。その場所には町営住宅ができた。家賃が安いことと、母、娘、息子の3人の家族で住みやすいことで雅子はここに住むことにした。しかし、娘の仁美がバルコニーで涼んでいるとそこに鏑矢が飛んできて窓を割った。
それから、町営住宅ではラップ音や幽霊やそのほかの奇妙な現象が起きるようになった。マスコミや祈祷師がおしかけて普段の生活もできないようになっていた。その中の1人の祈祷師が、雅子にこの騒ぎの理由があると伝える。思い当たる節はなかった。
仁美は学校でもいじめられていて、班長の埼山くんの提案でいったピクニックも、最後に車の中で吐いてしまい失敗した。それからさらにいじめられるようになり、でも自殺のきっかけをつかめずにいた。その時、前途洋洋だったはずの埼山くんが死んだことを知る。あの崎山くんでもと思い、バルコニーから飛び降りようとする。そのとき、戦場が見えたくさんの人が死と直面していた。それを見て死が簡単なことと知った仁美は生きていこうと思った。そのときに、怪現象も全部しずまった。


感想・レビュー
やっぱり鈴木光司は水に関係するなぁと思った。それについても、あとがきに理由が書かれている。その体験が「灰暗い水の底から」になっているとのこと。
この短編集に関しては、呼ばれたというのもキーワードかもしれない。つながりとか因縁とか感じる。僕はその中でも、しるしが好きだった。

工学部・水柿助教授の逡巡 森博嗣

工学部・水柿助教授の逡巡

工学部・水柿助教授の逡巡


きっかけ
当然100円だったので買った。一応、水柿助教授シリーズということも意識したけど、前作のことはあまり覚えていない。


ネタバレ・あらすじ
各章のはじめや各所にストーリーと全く関係のない考えや思ったこと的な文が書かれている。それはほんとに好き勝手という感じで、水柿くんの思ったことなのか作者の思ったことなのかわからない。
さらにミステリーでは嘘を書いてはいけない、視点が第3者になってはいけないなどのルールも載っている。あと、小説家という仕事は締め切りをどんどん引き伸ばすとか、取材費と称して旅行にいけるなどの生活も書かれていて、ちょっと勉強になる。


水柿くんはある日、妻の須磨子さんの薦めによって、唐突になんとなくミステリー小説を書いてみた。工学部で論文などを書いていたので、横書きでしか書くことができない。ところが、須磨子さんの反応はいまいちだった。ヒロインが自分にまったく似ていないので、このヒロインが水柿くんの理想なのかと怒る。それもあわせてなのか、とにかく反応がよくないので、他の友人にも見せたがお世辞で興味深いと言ってくれている感じがしたので、出版社に送り世間の評価を得ることにする。


出版社からの返事はおもしろいので本にして出版したいとの返事だった。水柿くんは今まで模型工作に使っていた時間を小説を書く時間に使うようにして、2作、3作と仕上げていく。4作目が最初の出版となり、そこから立て続けに過去の3作を出版する。そこで有名になると思いきや、大学での反応はあまりなく、大学の仕事が免除になることもない。


それ以降、締め切りに遅れないことなども評価され、他の出版社からも依頼がたくさんきて、ことわらずに書いているうちにどんどん作品はでるようになった。本屋には必ず水柿くんの出版物があるようになった。そして、サイン会をお願いされて、悩んだ末に相手の名前と自分の名前と羽根のマークをかいたりする。


印税がたくさん入ってきて、生活がよくなるはずだけど、ほとんど生活は変わらなかった。現金で大きな家などを買うが、それは他に使い道がなく貯金よりも安全かもしれないという判断だった。水柿くんは模型をたくさん買い溜まる一方で、須磨子さんは月に5,6冊も本を買うようになっただけだった。


感想・レビュー
水柿助教授というか、森博嗣助教授そのものではないかと想像してしまう。そして、須磨子さんが理想の女性そのものではないかと。でも、小説だと言い張っているのでそういうことにしておく。というか、このM&Sシリーズ(いつの間にシリーズになっていたのだろう?すでに3作目もでているみたいだし)はミステリーじゃなかったろうか。1作目は確実にミステリーで構成もちょっと違った感じがする。
でも、この作品はこれでけっこう好きだった。特にお金持ちになっても生活のあまり変わらないところなどは好感が持てる

海辺のカフカ(上・下) 村上春樹

海辺のカフカ〈上〉

海辺のカフカ〈上〉

海辺のカフカ〈下〉

海辺のカフカ〈下〉


きっかけ
村上春樹の本はけっこう読んでいる。最近では、中古の100円の棚に村上春樹が並んでいることが少なくなってきた。だから、この「海辺のカフカ」もさすがに100円とはいかなかったが、150円で買った。上下巻で300円で買えたのは、かなりお得だったのではなかろうか。


ネタバレ・あらすじ
主人公の田村カフカ(偽名)と、ナカタさんという老人の章が交互にあり、話がすすんでいく。2人はだんだん近づいていき、物語が交わるかというところまで来て、かすめるだけで終わり、2人が直接会うことはない。


主人公は田村カフカ。父親だけに育てられ、15歳の誕生日に家出をする。家出をするにあたり、父親の書斎からお金とナイフなどを盗み出し、体を鍛えたりなどの準備も怠らなかった。行き先はただ四国と決めていて、高松への夜行バスに乗る。バスでさくらという年上の女性と知り合う。
高松に着いた後は、あらかじめ予約してあったホテルに泊まり、近くのジムと図書館を往復する規則正しい生活をする。ある日、気がつくと胸を誰かの血で染めた状態で神社にいた。その前の数時間の記憶がなくて何が起こったのかわからない。とりあえずホテルに戻ることをやめて、さくらに助けを求めて一泊させてもらう。
図書館にまた行くと図書館の受付の大島さんに話しかけられ、家出少年であることを見抜かれ、図書館で生活させてもらえるようにしてもらう。その準備のために高知の山奥の家にしばらく1人で滞在することになる。その家の裏には、迷ってしまうような深い森がある。その後から、図書館の一室で暮らし、図書館の開館などの簡単な手伝いをして暮らすようになる。図書館の一室で生活していると、図書館の責任者の佐伯さんの15歳の頃の幽霊を見る。幽霊は昔の恋人の描いた「海辺のカフカ」を眺めている。佐伯さんは現在40歳を過ぎていて、昔にレコードも出していた。雷にうたれても生きていた人の取材をした話を書いていて、それで主人公の父親と知り合った可能性があるので、年齢的にも田村カフカの母親の可能性がある。それを佐伯さん本人に話したのだけど、可能性があるまま答えは保留にされてしまう。佐伯さんの幽霊は田村カフカを15歳のときの恋人と思い交わってしまう。これは田村カフカが父親にかけられた呪いで、「父親を殺し、母親と姉を犯す」ということ呪いの成就を意味する。


1946年にUFOが目撃される事件があり、その光をみた小学校の生徒が20人近く気絶してしまった。その中で1人だけすぐに目を覚まさずに病院にしばらく入院した生徒がいた。これがナカタさんである。ナカタさんはこの事件の前までは優秀な生徒だったのだが、目を覚ましたときから記憶がなくなり、読み書きなどもできなくなってしまった。手先が器用だったので、木工細工の製作所で働いていたが、そこの雇い主がなくなり、兄に世話になるために年老いてから東京の中田区に住むようになった。
知的障害者としての補助で生活をしている。その他には、事件の後から猫と話すことができるようになったので、人に頼まれて猫探しのバイトのようなことをして暮らしている。
コマちゃんという猫を探していたところ、空き地にいる情報を得て、そこで待っているとジョニー・ウォーカーという猫を殺して、その魂で笛を作っている男で出会う。猫のコマちゃんもジョニー・ウォーカーに捕まっていて、猫を助けるためには、ジョニー・ウォーカーを殺さないといけないことになる。そこで無我夢中でナカタはジョニー・ウォーカーを殺す。交番でそのことは話したのだが、相手にされなかった。ナカタさんが自首とともに予言したように魚が空から降ってきた。ジョニー・ウォーカーは田村カフカの父親であるようだった。それから、ナカタさんはやらなくればいけないことが浮かび、西に向かうことになる。猫とも話ができなくなってしまった。いろんな人に助けられて、ヒッチハイクで岡山まで行った。その時のトラックの運転手のホシノさんと一緒に行動するようになる。
ナカタさんはやることがはっきりしないが、少しずつ次にする最低限のことが分かり、四国に渡る。そして、入り口の石というものを探し始める。入り口の石はホシノさんが夜中にポン引きをしていたカーネル・サンダースに在り処を教えてもらう。その石が雷の鳴る日に重くなって、入り口を開けるためにはその重い石をひっくり返さないといけない。ホシノさんががんばってひっくり返した。入り口を開けた後、またある場所を探さなくてはいけなくなった。それがなんと甲村記念図書館、田村カフカのいた図書館だった。そこでナカタさんは佐伯さんと話をする。佐伯さんはナカタさんに今まで書いてきた自分の記録を燃やしてもらうようにお願いする。佐伯さんは死がナカタさんに会うことが運命とだったようで、その後に机に突っ伏すようにして死んでしまった。


田村カフカの父親が殺されたことによって、家出をしている田村カフカを警察が捜している。問題が起きるのは良くないので、また高知の小屋でしばらく過ごすことになる。佐伯さんに恋をしていて、辛かったのだけど仕方ない。夢の中では嫌がるさくらを犯してしまった。これで姉も犯してしまったことになる。
主人公は深い森を本格的に奥に向かうことにする。リュックや食料や懐中電灯なども準備していく。しかし、途中で荷物は全部捨ててしまった。そのときに開けた場所に着き、昔この森で戦争の演習中に行方不明になってしまった2人に会う。ここは時間が意味のない場所で、入り口が開いているのはしばらくの間で戻って来れなくなってしまう可能性がある。森の奥では、15歳の佐伯さんが料理をつくってくれたりした。図書館もあるのだけど、そこに本はないという。それから今の佐伯さんにも会った。もう死んでしまったことをしり、海辺のカフカの絵をもらって、そしてこの森からでてちゃんと生きてほしいと言われる。


ナカタさんとホシノさんは、甲村記念図書館から帰った後に、佐伯さんの記録を燃やした。その後、入り口の石を閉じなければいけないのだが、そのタイミングが分からないまま、ナカタさんが眠ったまま死んでしまった。ホシノさんは入り口の石を閉めるタイミングを待ったまま、ナカタさんの死体とアパートで暮らす。ホシノさんは猫としゃべれるようになっていて、猫が邪悪なものが入り口の石を狙いにくると教えてくれる。深夜にその邪悪なものがやってきた。それは白いつちのこみたいなもので切っても再生するし、殴っても手ごたえがない。また重くなった入り口の石を閉めて、逃げ道をなくしたところで鉈でとても細かくして殺すことができた。その破片を袋に詰め外で焼いて、ナカタさんのことを警察に匿名で電話した。


主人公の田村カフカは、佐伯さんの意思を尊重して森から小屋まで帰ってきた。そこには、大島さんの兄が迎えに来てくれていた。サーフィンの話をして甲村図書館に向かう。図書館で大島さんと最後のあいさつをする。大島さんは佐伯さんに代わり、甲村図書館を仕切っていくことになる。海辺のカフカの絵を譲り受ける。さくらにも電話であいさつをする。それから、東京の家に戻り、警察にも連絡して、義務教育を終えようと決める。


感想・レビュー
実に村上春樹らしい独特の世界だったように思う。メタファーとか相手の言葉をそのまま繰り返す部分などが特にそう思えた。別々の話が近づいていきそうなのに、最後まで完全に交わらない部分が好き。


村上春樹の小説は、ヤマや落ちがあまりない気がする。結局なんだか成長したが、元の世界や生活に戻っていく話が多いような気がする。

季刊怪 第零号


きっかけ
妖怪が大好きなので、このシリーズは見つけると買っていた。僕も世界妖怪協会に入れてもらいたいが、全然知識が足りないと思う。


ネタバレ・あらすじ
妖怪人類学フィールドワーク パプワ・ニューギニア
目撃画談 読者の妖怪の目撃情報などを水木しげるの挿絵で紹介する。あるき水、クダ、光る目と家鳴り
不幸の消滅 荒俣宏京極夏彦水木しげるの対談
秘境ニューギニア探検記
パプワ・ニューギニア、セピック丘陵の妖怪たちでは、いろんな木や川や石にそれぞれの精霊(妖怪)がいることが細かく決められている。領域をおかすと仕返しをされるなどの逸話も残っている。
霊に親しい人々


連載小説 巷説百物語 小豆洗い 京極夏彦 単行本化されているのでそちらで詳しくネタバレする。
霊の世界史 ネアンデルタール人の歴史 荒俣宏が今は絶滅してしまったネアンデルタール人の霊に対する考え方を、人類最古の霊との遭遇として書いている。火を使うことと絵を描くことが霊や神との対話を可能にした。
神秘家列伝 スウェーデンボルグ 水木しげるの漫画でスウェーデンボルグの紹介をしている。父親譲りで精霊を見たりする能力があり、天文学や数学などを使い人類の役に立つものを設計図を書き発明したりしている。霊界に自由に行き来できる能力もあったので、それを旅行記のように克明に霊界書として書き残していいる。
妖怪ウォーカー 鬼の巻では、鬼に関係のする神社やミイラなどを地図つきで紹介している。
絵解き画図百鬼夜行の妖怪 多田克己 百々目鬼、岸涯小僧、川赤子、赤舌
世界妖怪協会とはなんぞや 水木しげるが世界妖怪協会をつくった理由を説明してくれている。


感想・レビュー
思いの外、勉強になった。世界の妖怪などはあまり好きではないのだけど、精霊などとして同じような形でそういう不可思議なものが存在するのだと感じた。今の日本にくらべるとニューギニアなんかはまだ妖怪が生きている感じがする。


それよりもネアンデルタール人についてのことがいろいろと驚いた。絶滅してしまったということは現代人類につながるものより劣っていると思ったが、脳の容量も現代の人間より多いみたいだし、死や呪術もあったようだ。

少年たちの終わらない夜 鷺沢萌

少年たちの終わらない夜

少年たちの終わらない夜


きっかけ
鷺沢萌という名前は中古でよく見て気になっていた。さらに題名にひかれてこの本を買った。


ネタバレ・あらすじ
少年たちの終わらない夜
主人公は川野真規。高校3年生でバスケ部のキャプテン。そんなに美人でもないが、ちょっと変わっている笠井陽子と付き合っている。今までの相手とは違い、未だに寝ていない。
負けるのが嫌いな真規は最後の引退試合で、相手でフェンスを突き飛ばしてなんとか勝った。それを見ていた陽子は真規を理由もなくこわいという。その後、うつ状態の誰にも会いたくない陽子に会いに行くが、陽子は世界のすべてがこわくて、自分が嫌で、真規のことも本当は好きでないという。真規は絶望して、飲みに行った。
その帰りに引退試合の時の相手に見つかって、その時のズルの仕返しに殴られた。真規はその復讐方法を考え続けることだけが、今の崖っぷちの状態を維持するために1番大事なことだった。


誰かアイダを探して
主人公の僕は、アイダとバーで出会った。突然ドライブに誘ったが彼女はついてきた。それから毎日アイダとは会っているが、彼女のことはよく分からない。19歳という年齢の割りに大人びているだけだ。食事先での子供に機嫌を悪くしたり、その1分後にはすぐに機嫌を直したりと、コロコロと気分が変わる。
アイダは20歳になったらと言いかけ、全て嫌になったという。自分がいなくなっても誰も気づかないかもしれないという。ずっと楽しいままでいることはできなくて、区切りをつけないといけない。そんなことばかり言ってどこかに消えてしまいそうなアイダがどこにも行かないように、僕は道でとんぼ返りをしたり、キスをしたり、本当に楽しいことをする。
次の日、アイダは本当にいなくなってしまって、それでも僕は学校に普通に通っている。今なら僕はアイダの言葉の本当の意味が分かる。20歳になったら何をやっても普通になってしまうという気持ちをアイダと共有したくて、いなくなったアイダを僕は探す。


ユーロビートじゃ踊れない
主人公のヒロシは、肌は白く髪も茶色で目は緑色。ハーフかどうか本当のところは本人も知らないが、ただ育ててくれた祖母は、その性質のせいかヒロシを憎むように嫌っていた。目の色に代表される曖昧さは、どこにでもとけこめるという性格もヒロシに与えていた。
高校生になると一人暮らしをはじめ、倉庫街で港湾労働者として働いている。夜には居酒屋のバイトもしている。そして、土曜の夜にはリューイというディスコで遊ぶようになった。
そのリューイで年上の暁子と出会う。フーズボールの合間にもうまく声をかけられなかったが、向こうから離しかけてきて、高級車で送ってもらうことになる。次の週も2人はあってデートをする。しかし、ディスコの古株は暁子はダメだと忠告してくるが、ヒロシには意味が分からない。
2人は、空を飛ぶというよりも、空の低いところを泳いでいる夢を見ることを話す。暁子はその夢で自分が誰からも注目されないことをこわいという。その後、ヒロシは車の運転をさせてもらい、海に飛び出すわずか30センチ手前で車を急停車させた。それに対して暁子は驚いて泣いていた。
それから2人は毎日会ったが、暁子はヒロシのことを刹那的だという。それでも暁子はヒロシに惹かれていく。ヒロシも惹かれていくのだが、自分の曖昧さの内側にいない暁子はダメなんだと気付く。それは暁子が1番生きた表情をしていた曲では、ヒロシは踊れないという言い訳をつくりだした。


ティーンエイジ・サマー
小中高と12年間同じ学校通った仲間がいた。今は、高校卒業後の初めての夏を迎える。親の金でアメリカに留学した浩次、理由は分からないがバイトでお金を貯めているリン、勉強して北大に受かった良ちゃん、主人公の僕と梶井はなんとか受かった大学に通っている。
大学で出会った友達はみな、大学に入ったから何かをしなくてはいけないという常識にしばられていてなじめない、だから、未だによく高校の仲間と遊んでいる。大学で昔遊んだ女の子がイスパニック学科という難しいものを弁居していて、翻訳家になるんだという。もう遊ぶことなんか考えてなくて、夢という落ち着いたものを手に入れたという。
10代最後の夏に仲間で集まる。大学に入るともう姑息にしかあそべない。でも、そんなことはできなくて、楽しいことも消えていく。僕の自慢のリンはお金を貯めて、アメリカに行く気らしい。いつでも楽しいことをしようと思っていたリンは、20代になったらできないことをいつまでも追いかけていくんだ。


感想・レビュー
遊んでいるが、どこか楽しめない年齢や気分になったものが、切なく書かれている感じがする。言いようのない不安とか、欠落感が見える。何もできるわけじゃないけれど、少年たちの夜は終わらない。つまらないから、ただ意味のない遊びをするしかないのだ。


こういう気分をどれだけたくさん味わってきたのだろう。みんな1度は感じてきたことかもしれない。ただ僕は今でもよく諦めと一緒に感じる。まだ少年なのだろうか。10代じゃないと楽しめないことはたくさんあったが、あまりやってきた気もしない。でも、20代になっても30代になっても、いつまでも10代にできなかったことは重くのしかかるのだ。

若者はなぜ3年で辞めるのか 城繁幸

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)


きっかけ
最近騒がれている若者の生態なので読んでみようと思った。かくいう私も3年以内でやめた口です。その心理をちょっとばかり知りたかった。でも、この本に書いてあることにあてはまるとは、読む前から思っていなかったのだけど。あとこの本はけっこう話題になっていたような気がしたのもある。


ネタバレ・あらすじ
若者がやめていく理由の1つは、若者がわがままで忍耐力がなくなっていることがあげられる。昔の人は働き始めてすぐに自分の好きな仕事などやらせてもらえず、雑用ばかりになることを覚悟してきた。しかし、最近の若者はそれができずに思っていた業務内容と違うとミスマッチだという。企業の方も人材の採用の仕方が変わってきている。昔はなんでもこなせるタイプを大量に採用してきたが、最近では専門的な人間を少数だけ採用するようになってきた。人が足りなければ派遣社員を雇えばいいのだ。ここで若者も自分探し的に就職活動をするようになってきた。さらにその若者たちを助けるように、転職市場も成熟してきた。企業は不況などで人件費を削減するが、それは労働組合のせいで新規採用を減らすことしかできにくい。そうなると給料が安くて即戦力の派遣社員が使いやすくなる。専門的な人間も探しやすいのだ。


日本の企業は長く年功序列という雇用形態をとってきた。これは若いときには給料は低いが、年齢を重ねると役職もあがり、40歳を越えたくらいから若い頃の見返り的に実際の仕事以上の給料をもらえたりする。現在は成果主義に移行し始めているが、実際は年功序列の上での話なのだ。しかし、全ての人が役職があがるわけではなく、優秀な人材からあがっていき、自分より上の役職が空かない限り出世することはありえないのだ。自分が一生平社員でいる可能性もでてくる。ということは、単純な年功序列のような安全なレールではなくなってしまうのだ。レールが不安定ということは、ローンを組んだりなどの人生設計も崩れていくことになる。それに気づいた若者はやめていったりもするのだ。


減った若者が数の多くなった管理職の分まで働くので、なんでもやり忙しいことになる。年功序列制度以外にも、日本という国は若者につけをまわしている。数の増えてきた老人のために若者が自分がもらえるかもわからない年金をおさめたり、政府が借金をして改革などを一時しのぎして次の代にどんどんまわしていったりする。福祉の制度も老人などに使われることが多い。労働組合でも発言権があるのは、結局のところ50代などの人間では自分たちに有利な年功序列制度を維持させようと企業に要求するが、労働組合の若者は完全成果主義を望んでいるが、そもそもやめていった若者が多いということは、組合に加盟している若者が少ないので、その意見が通ることはない。


年功序列についてはさらに詳しく書かれている。年功序列の長所は愛社精神が育つこと。さらに終身雇用が前提なので、年長者から若者に技術の蓄積が会社としてできていくこと。年功序列が崩壊したことで、この日本企業の強さが失われたともいえる。派遣社員というものが技術継承をさらに減らしている。若いときに我慢さえできれば、将来は必ずそれ以上の見返りがある。終身雇用でやめにくくさせるために、会社の取引先との結婚の斡旋や銀行などでは自分の会社でローンを組ませたりする。
年功序列は新卒社員しか認めない。あとから年齢の違うものが中途採用されると例外をつくってしまい、給料の支払いやレールというものに影響を与えてしまうのだ。だからレールに乗れなかった者は、そのまま中々就職先が見つからないということになってしまう。リストラなどでやめさせられてしまった場合も悲惨だ。今までの人生設計が全て崩れてしまい、さらには次の職につけないことすらある。


企業で体育会系が好まれているのは、年功序列と相性がいいからだ。忍耐力があったり、先輩の言うことは絶対だということを昔から刷り込まれているからだ。これだと「若いうちは我慢して働け」ということに従順になりやすい。


こういう年功序列の会社のレールを降りて、自分で会社を始めた人や転職して希望の職場につけた例をあげている。そして、自分の何年後かの未来をみつめて、自分のレールが確かなものなのか確認する必要がある。確かでないのなら、レールを強固にするためにもっと努力して役職につけるように成果をだしたり、レールを降りて自分の能力が生かせる職に転職する必要がある。


感想・レビュー
自分も同じ若者に属していて、なぜやめたのか考えるとミスマッチだったのだと思う。忍耐力がなかったとも思うが。ただこの本を読むと、やっぱり年功序列では先が厳しいかなと思う。自分がそのやめた会社でちゃんと仕事ができる側の人間になれそうもなかったので、そこで見切ったのはよかったのかもしれない。危ういレールではあったのだ。


年功序列は悪だとばかり思っていた、技術の継承があり、それが日本の企業の強みでもあったのだと思うと、年功序列も悪くないと思った。ただ僕には合わない世界だとは思う。年功序列の世界で生きるにしろ、成果主義で生きるにしろ、僕はもっと勉強して成果をあげられるようにならないと人生はうまくいかないと思う。