工学部・水柿助教授の逡巡 森博嗣

工学部・水柿助教授の逡巡

工学部・水柿助教授の逡巡


きっかけ
当然100円だったので買った。一応、水柿助教授シリーズということも意識したけど、前作のことはあまり覚えていない。


ネタバレ・あらすじ
各章のはじめや各所にストーリーと全く関係のない考えや思ったこと的な文が書かれている。それはほんとに好き勝手という感じで、水柿くんの思ったことなのか作者の思ったことなのかわからない。
さらにミステリーでは嘘を書いてはいけない、視点が第3者になってはいけないなどのルールも載っている。あと、小説家という仕事は締め切りをどんどん引き伸ばすとか、取材費と称して旅行にいけるなどの生活も書かれていて、ちょっと勉強になる。


水柿くんはある日、妻の須磨子さんの薦めによって、唐突になんとなくミステリー小説を書いてみた。工学部で論文などを書いていたので、横書きでしか書くことができない。ところが、須磨子さんの反応はいまいちだった。ヒロインが自分にまったく似ていないので、このヒロインが水柿くんの理想なのかと怒る。それもあわせてなのか、とにかく反応がよくないので、他の友人にも見せたがお世辞で興味深いと言ってくれている感じがしたので、出版社に送り世間の評価を得ることにする。


出版社からの返事はおもしろいので本にして出版したいとの返事だった。水柿くんは今まで模型工作に使っていた時間を小説を書く時間に使うようにして、2作、3作と仕上げていく。4作目が最初の出版となり、そこから立て続けに過去の3作を出版する。そこで有名になると思いきや、大学での反応はあまりなく、大学の仕事が免除になることもない。


それ以降、締め切りに遅れないことなども評価され、他の出版社からも依頼がたくさんきて、ことわらずに書いているうちにどんどん作品はでるようになった。本屋には必ず水柿くんの出版物があるようになった。そして、サイン会をお願いされて、悩んだ末に相手の名前と自分の名前と羽根のマークをかいたりする。


印税がたくさん入ってきて、生活がよくなるはずだけど、ほとんど生活は変わらなかった。現金で大きな家などを買うが、それは他に使い道がなく貯金よりも安全かもしれないという判断だった。水柿くんは模型をたくさん買い溜まる一方で、須磨子さんは月に5,6冊も本を買うようになっただけだった。


感想・レビュー
水柿助教授というか、森博嗣助教授そのものではないかと想像してしまう。そして、須磨子さんが理想の女性そのものではないかと。でも、小説だと言い張っているのでそういうことにしておく。というか、このM&Sシリーズ(いつの間にシリーズになっていたのだろう?すでに3作目もでているみたいだし)はミステリーじゃなかったろうか。1作目は確実にミステリーで構成もちょっと違った感じがする。
でも、この作品はこれでけっこう好きだった。特にお金持ちになっても生活のあまり変わらないところなどは好感が持てる