マイ国家 星新一

マイ国家―ショート・ショート (1968年) (新潮小説文庫)

マイ国家―ショート・ショート (1968年) (新潮小説文庫)


きっかけ
前々から日本のSF作家の御三家としてやっぱり読んでおきたいと思っていた。前から買おうと思っていたのだけど、星進一の作品はちょっと古いのか、きれいな中古の本がなくて諦めていた。ようやくきれいな中古本が何冊か置いてある店があり、その中で1番きれいだったこの本を購入した。


ネタバレ・あらすじ
「特賞の男」は、いろんな懸賞で賞品を当てて倉庫に溜め込んでいる男の話。男はかっこいいのに、奥さんが太っていてかなりわがまま。でも、奥さんが幸運の女神で、この奥さんのおかげで懸賞に当たっている。


「うるさい相手」は、自分を買ってくれとしつこいロボットにまとわりつかれる男の話。買わないと心に決めていたのだが、友人に相談したところ、損はないというので、ロボットが諦めてしまわないうちに急いで買った。しかし、ロボットは、料理用、庭弄り用などのソフトを入れないと何もできない。毎月メンテナンスにも行き、お金がかかり借金までしてしまった。そのとき、他の友人にロボットを買うかどうかの相談を持ちかけられる。同じ苦しみをあじあわせてやろうと「買って損はないよ」と薦める。


「儀式」 僻地の気象観測員が、異星人が基地を作っているのを発見して、遠くの本部に伝えに行く。しかし、マスコミなどを引き連れて元の場所に戻ると基地も何もなかった。気象観測員が気が狂ったとされる。次の日にまた気象観測員が外を見ると、同じように異星人が基地をつくっていた。今度も気違い扱いされるのは嫌だし、クビになってしまう可能性もあるので、報告に行かなかった。これは、異星人が人間の反応の仕方を知って、最初は板だけの基地を作り騙し、その後に侵略用の本格的な基地をつくっていたのだ。異星人は、この板を作って騙すことを不思議に思うが一種の儀式として受け入れている。


「死にたがる男」 ある会社の社長は、別の男にいつも金を渡していた。2人は元々この会社をつくった人間で、自分たちの会社がのしあがるためにライバル会社の社長を殺したのだ。それにより、会社はどんどん大きくなっていった。しかし、1人は働かなくなり、殺人を犯したことを種に脅迫してお金をもらうようになる。この男が死んだ時には、弁護士によりその事実と証拠が入っている封筒が警察に提出される仕組みになっている。だから、すぐに死ぬとおどす。ある日、働いていた方の男が飲みに行こうとしていた時に、またも金を要求されて、「死んでやる」とい脅しで道に飛び出した。いつもなら止めてお金を渡すところだが、今日は止めなかったら本当に車に轢かれて死んでしまった。今日で殺人の時効が成立するので、飲みにいくところだったのだ。


「いいわけ幸兵衛」 いつも遅刻している平社員が課長を納得させるためのすごい言い訳をする。それは時に部長や社長にもそのすごい言い訳をする。その能力を買われ、出世して、国から視察員や株主なども言い訳でごまかしていく。自分自身が社長になり、誰にも怒られないので言い訳することがなくなって生きがいをなくしていたが、事業が失敗して苦情が舞い込んだときに、公の場で言い訳をすることを楽しみにしている。


「語らい」は、死んだ男の魂が乗り移った犬に、女の飼い主がずっと死んだ男に対する恨みを聞かせ続ける切ない話。


「調整」 エヌ氏がロボットを調整センターにだしたところ、帰ってきてからは前のように命令を1回できかなくなった。3回くらい言うと動くようになる。そのことで調整センターに苦情をいうと、主人の命令が「○○やってくれ」「やっぱりいらない」のようによく変更されるので、それは効率的ではないので、3回くらい言って強く願っていることが分かった場合に命令をきくように調整されていた。この調整を直すためには、エヌ氏が人間調整センターに入院して、思慮深い性格になるしかないといわれる。


「夜の嵐」 美矢子がアパートに帰ると、恋人の飛行機が事故にあったり、外を歩いていた老人が蛇に殺されたり、鏡に写った自分の姿が急に年をとっていたりと、自分にとって嫌なことばかり起こる。アパートの中に原因を探すと、不思議な箱があった。その時未来から来た青年がやってきて、その箱は自分にとって嫌なものを幻覚として生じさせる効果があると説明し、その箱を未来に持って帰るのが自分の仕事だと言う。美矢子はこの箱を拷問用と思うが、青年が言うには未来では平和と安泰ばかりで緊張やストレスを生じさせるこの箱は娯楽用だという。そんな箱を使わなくても、緊張やストレスが生じる世界は未来の人にとってはあこがれかもしれないと感じる。


「刑事と称する男」 刑事のまねをして所持金を奪う事件が多発していた。その犯人らしき男を緊急逮捕した男は、近くの中華料理店の一室を借りて尋問する。しかし、相手の男は実は自分が刑事で刑事の真似をして、刑事の真似をした犯人から所持金をもらうかわりに見逃すという取引をしている刑事を秘密裏に調査しているという。お互い証拠がなくて、どちらも偽者かという時になって、そのやり取りを見ていた中華料理店の店主がその2人のやりとりに感心して、麻薬のやり取りなどの裏家業への誘いをかける。その誘いの言葉を証拠として、2人はとびかかり料理店の店主を逮捕した。2人とも刑事で演技で全部行っていたのだった。


「安全な味」 新しい星を探している宇宙船があった。乗組員は宇宙食に飽き飽きしていて、ちゃんとした料理を食べたがっていた。あるとき、大気や植物があり、文明がある星を発見して着陸する。ある家に招待され、家にあるどろどろのものを食べたところ、とてもおいしかった。それが何かと聞くと植物に肥料だという。その肥料で育てた植物を食べ、その植物で育てた肉を食べたが、どちらもどんどんおいしくなっていった。そのまましばらく滞在してもいいといわれるが、用心深い隊長はまた出発することにする。食べ物を食べているときの異星人の自分たちの目が普通ではなかったという。きっとその後栄養をためた状態で自分たちを食べる気だったのだという。飽きた宇宙食のような安全な味が一番良いというお話。


「ちがい」 神経科にある女が来た。女は行方不明になった夫が戻って来たが、前と別人のように感じると言う。このまま失踪扱いになっていれば、多額の保険金が支払われるはずだった。そのお金がないと困るので、女は夫が本物かどうかつきとめてくれという。そして、医者は夫が神経科に診察に来たときに保険会社が保険金を支払わないために送り込んだ精巧なアンドロイドであると見抜く。それにより、医者が保険会社に殺されそうになるが、医者は昔このアンドロイドの秘密に見つけて殺された医者のアンドロイドだった。


「応接室」 アール氏はエフ博士に大金を貸していた。友人に金を返してきてもらうように頼んだが、誰も金を取り戻せなかった。仕方なく自分で取り戻そうとエフ氏の家に向かうと、誰もおらず音声の案内により応接室で待たせてもらうことになった。その待っている間に退屈しないようにロボットは飲み物や映画などアール氏の好みに合うように出していく。映画の内容などから音声もアール氏の好みの女性の声やしゃべり方にしていく。いつの間にか時間が過ぎて、アール氏は帰らなくては思い帰る。帰ってきたエフ博士は、その映像を見てアール氏から借りたお金でつくったこの装置の成功に満足する。


「特殊な症状」 ある日、妻が病院に来て「夫が夢遊病の症状をしておかしい」と言う。本人を見てみないと分からないので、夫に来させるように言うと、別の日に夫がやってきた。しかし、夫は妻に促されてきたわけではなく、逆に「妻に夢遊病的な症状があり様子がおかしい」と言う。どちらの言う事が正しいのか分からないので、夫婦の家に行ってヒントを得ようと思った。お互いに相手はおかしいだろうという目配せをしている。しかし、2人とも部屋の1ヶ所を特に気にしていた。そこに秘密があると思い、決心して医者は留守中に忍び込みそこにあった包みを盗み出した。ちょうどそこに刑事が現れて包みを探していたという。包みは犯罪の重要な証拠で、医者が疑われてしまう。仕方ないので、夫婦にも証言してもらうために夫婦と刑事と医者で包みを開ける。夫婦はお互いが犯罪を犯したと思い、そこで無実とするために夢遊病などの精神障害としての診断書を書いてもらおうと医者に行って工作をしようとしていたのだ。この包みは、すでにつかまった犯人が勝手に隠していたものだった。


「ねむりウサギ」 うさぎと亀をモチーフにした話。うさぎが亀に競争を申し込んだ。しかし、ゴールの丘の頂上を間違えてしまったことにより、負けてしまった。それ以降も何度も競争をするが、前日の寝不足や全力で走りすぎて岩に衝突して気を失ったりとどうしても勝つことができなかった。最後には競争の途中で、そのまま勝った幻覚を見ながら幸せそうに死んでしまった。そこはうさぎヶ丘と呼ばれるようになる。


「趣味」 純子は室内装飾という趣味を持っていた。仕事にはしないで、友人の頼みなどで室内装飾をしていたが、その評判はよかった。そして純子も結婚をする。夫の趣味にあわせて、家具を選び、壁紙を張替え、芝生を植え、外壁の煉瓦まで変えて完璧にした。夫はそれに感動していた。ある日、夫が純子のために誕生日プレゼントで良い絵を買ってきた。純子は絵に合うように、また壁紙や家具や庭を変えていった。そして、父親に相談を持ちかける。絵が夫に合わないので、夫を交換したいので弁護士を紹介してほしいと。


「子分たち」 窃盗団の首領が逮捕された。しかし、本拠が全然分からないので、尋問をしていた刑事が、首領の変装をし、しゃべり方を覚え、首領のよく行っていたバーに行って子分たちからの接触を待った。ある日、変装した刑事に接触してきた男がいて、ついていくと本拠に連れて行かれた。そこで子分たちから攻撃を加えられる。子分たちはもう窃盗団を解散して、首領を警察に突き出し自首するつもりだったのだ。その前に今までに首領にたまった恨みをはらし、この暴力も警察に自首したことへの点数稼ぎになるという。つかまった首領は本当は刑事だということをしゃべられないまま、子分たちにぼこぼこにされてしまう。


「秘法の産物」 エヌ氏は財産をたくさん持っていて、人間の価値は財産で決まるという思想を持っていたが、ある時、絶世の美女を連れていることが価値であるという思想に変わる。その絶世の美女を手に入れるために、財産をどんどん使い超自然的な方法を使う。儀式に取り掛かったところ成功し、願いをかなえてくれる魔人が現れた。魔人は呼び出されたのが久しぶりだったので、5つの願いを叶えてくれるという。まず美女を願い、美女が服を欲しいというので、2つ目に服をお願いし、宝石も欲しいというので、3つ目に宝石をお願いした。わがままな美女は4つ目にかっこいい青年をお願いした。それをエヌ氏は取り消そうとしたが、すでに遅く、5つ目の願いで青年と美女によりエヌ氏が消されてしまった。最初に、従順な美女をお願いしておけばよかったのだ。


「商品」 ケイ氏はセールスマンで、いろいろな星に商品を売りに行っている。ある星に着いたが、そこは地球よりもちょっとだけ裕福で文明も発達していたので、何を売るかに困っていた。そこに、ハエが逃げ出したという大事件が起こり、ケイ氏はハエに対してはこんないいものがあると殺虫剤で殺してしまった。しかし、事件というのはハエがその星には9匹しかおらず、その1匹が逃げ出したので大事だったのだ。ケイ氏は処刑されそうになったが、地球からハエの卵を5つ取り寄せ、その星で人気者になってしまう。こういうスリルがあるからケイ氏はセールスマンをやめられない。


「女と金と美」 青年は美しい女と結婚するために、結婚詐欺をしてお金を溜めていた。美しい女はお金のある男にしかなびかない。おる女をひっかけて、部屋まで行き、結婚資金と称して大金をテーブルに置く。相手の女も同じようにお金を並べた。目を放した隙に女はお金と共にいなくなってしまった。青年は落胆し、結婚詐欺を再開もせずにお酒ばかり飲んでいた。そんなある日、とても美しい女が結婚を申し込んでくる。お金がないので無理だと断ろうとするが、それでも結婚するという。この女はある日、お金を持ち出し整形をしてきたのだ。それから、青年と女は平凡な幸せな人生を送る。


「国家機密」 グラニア国という料理で財政をまかなっている国があった。この国の料理は、とてもおいしく他の国々もその秘密を知りたがっていた。しかし、いくらスパイを送っても行方不明になるなどして失敗ばかりしていた。ある大国がその秘密を探るために新しいスパイを送った。料理の知識のあるコックを一流のスパイに育て上げた。スパイは料理店になんとかコックとして雇われたが、料理は店でつくられるのではなく、お城から来るようだった。お城にもぐりこむために必死に信用を得ようと働く。そして、なんとお城で働かないかと誘われた。お城に行くと、今までつかまった各国の一流料理人のスパイが働かされていた。このような方法で、一流料理人をスパイとして捕まえて働かせていたのだから、最高の料理がつくれていたのだ。


「友情の杯」 かなりの財産家の老人が入院していた。この老人はもう死期が間近で、最後の願いとして友人からもらったお酒を飲みたいという。この友人というのは若いときに老人と実力も近く争っていた社員だった。友人は社長に気に入られ、老人の方が社長の娘に気に入られていた。その結果、会社は老人がつぐことになり、友人はその祝いにお酒を送ったのだった。ライバルを蹴落とすために毒を入れたかも知れず、ずっと飲めずにいた。しかし、老人が飲まなかったことにより殺人計画がばれて老人に証拠を握られているかもしれないから、よく働いたのかもしれない。それとも、本当にライバルとしてお祝いの気持ちで贈ったのかどうか分からない。友人ももう死んでしまったし、そろそろ確かめてもいいのではないかということなのだ。アルコールのせいなのか、毒のせいなのか、病気の発作なのか、理由は分からないまま老人は飲んですぐに死んでしまった。


「逃げる男」 青年は宝石店から大金を盗み出したが、顔を隠さずに犯行を犯したので、警察に追われていた。唯一の友人に少しだけかくまってもらい、今後の相談をすると、整形をして顔を変えたらいいということで病院を紹介してもらった。しかし、大金は逃走資金としてすでに遣ってしまい残っていなかった。また盗みをしても顔を変えればばれないと金持ちそうな家に強盗に入り女から金をうばった。その金を持って病院にいくと、整形の医者はなんとその強盗の被害者の女だった。


「雪の女」 男が休暇で山小屋に来ていた。ある夜、美しい雪女がたずねてきた。部屋の暖炉を消し、窓を開けて、自分が厚着をしてまで男は雪女を部屋に招きいれた。お酒をごちそうし、雪女は体が熱くなり服を脱ぎはじめる。我慢できなくなり男が襲おうとする、すると雪女はとけて消えてしまった。雪女は、温度が高くなると蒸発して気体化し、低くなるとまた女の形を取り戻すらしい。それから雪女は毎夜男をたずねてくるが、男が焦って抱きしめようとしてすぐに消えてしまう。男は待っている時間のせいで休暇が苦痛に変わり、狂いそうになってきた。意を決して町に戻るが、雪女が来ているかもと思うと山小屋へ行ってしまう。これからの春と夏と秋の間は、雪女は形がなくなってしまう。雪女は男を殺すような優しいことはしてくれない。


「首輪」 デール氏は、宝石の密輸入で捕まり、裁判で有罪の判決を受けた。3年の間、流刑星で労働をするか、それともこの都会で首輪をしてすごすかの選択をせまられた。今までの犯罪者は流刑星をみんな選んでいると言った。労働しなくても良くて首輪をつけているだけの生活なら3年くらい我慢できるだろうと、都会生活を選ぶ。しかし、この首輪は快楽的なものを得ようとすると、できないように反応するのだ。女に話しかけようとしてもそちらの方向を見ることができないようにし、娯楽番組や娯楽雑誌からも目を背けるようにし、酒や豪華な食事をとろうとすると口が開かなくなる。目の前にあるのに、その快楽を我慢しなければならない苦痛。デール氏も流刑星に行かせてもらうようお願いに行った。同じように快楽を禁止されていても、目の前にある我慢よりはずっと楽なのだった。


「宿命」 その星にはいつからかロボットがいて、ロボットは地面を掘り鉱物を取り出して加工し、自分と同じロボットを作っていた。ロボットは自分と同じロボットなので、同じ番号を振った。ロボット同士でその謎について話し合うが、プログラムにあるからだということで話が進まない。ロボットはある程度の数になると、今度は宇宙船を作り始めた。鉱物を掘るときの事故や、宇宙船の実験で何体も壊れたりしたが、なんとか宇宙船は完成し、1番壊れていないロボットが乗り込んで宇宙に飛び出した。宇宙にでるとプログラムを思い出し、目的地の地球に向かって進路をとった。地球についたが着陸に失敗した。そこでは人間たちがそのロボットの残骸を見つけ、番号を確認した。人間たちは同じようにロボットをいろんな星に散らばらせ、どの星のロボットが最初に地球に帰ってくるかの賭けをしていたのだった。


「思わぬ効果」 エフ博士はアレルギーの治療装置を発明した。何のアレルギーか分かった場合に、そのアレルギーの原因を懐中電灯のようなものにいれ、そこからでる光線をあてると治ってしまうというのだ。しかし、この装置には治療用のダイヤルがついていたがそれはプラスもマイナスもあった。マイナスにすると治療で、プラスにするとアレルギーにしてしまうことができるのだ。友人のエヌ氏がその装置を借りて、ミンクのコートをほしがる妻をミンクアレルギーにしたいという。ミンクアレルギーにする光線を妻に当てた後、ミンクのコートを買い与えたが何も反応が出ない。エフ博士に確認しても装置は完璧だという。販売店に確認してみると、実はミンクの毛皮ではなく精巧な偽物だという。偽物を見破ることができるのが、この装置の思わぬ効果だったのだ。


「ひそかなたのしみ」 エヌ氏は仕事が終わってもすぐに家に帰るような厳しい生活をしていた。そのエヌ氏のひそかな楽しみは、家に帰って寝るときに妻に楽しい夢を見る薬を与え、自分がバーに飲みに行って女の子と遊ぶというものだった。ある日、会社の外回りでそのバーの付近に寄るがバーが存在しなかった。家に帰りちゃんとお金も払っているのにおかしいと、布団で考えていると枕がおかしいことに気づいた。この枕は妻が買ったもので、枕に頭を乗せるとすぐに寝てしまい、バーに行く夢を見るというものだった。妻のほうが一枚上手で寝ている間にバーで使った分のお金を財布から抜き取っていたのだった。


「ガラスの花」 由紀子はガラスの花を神経質なほど大事にしていた。このガラスの花は持っていることで幸福になり、こわれると不幸になってしまうのだ。友子はその話を聞き、由紀子をうらやましく思い、ガラスの花を壊してやろうとたくらむ。ある日、家に侵入してガラスの花盗んで壊してしまった。花がないことに気づいた由紀子はとても焦っていた。本当はガラスの花を持っているといいことが何もなく、壊した人には悪いことが起こる呪いがかかってしまう。だから、由紀子がずっと持っていようと決めていたのだった。友子が嫌な予感を感じて家に戻ると、電話が鳴り相手は友子にとって悲しい不幸な知らせを告げる。


「新鮮さの薬」 エフ博士はバーで中年の紳士に声を掛けた。この紳士は、旅行やゲーム、読書、きれいな女の人も飽きてしまって、人生がすべてつまらないという。エフ博士はそういう雰囲気を感じとって紳士に話しかけていた。紳士は人生が楽しくなるならどんな大金を払ってもいいと言う。紳士を連れて家に帰り、薬ビンの一つを紳士に売った。この薬は食べ物の味をすべて忘れてしまい、アンパンでも牛乳でも天ぷらでもおいしく感じ、食事をすべて新鮮な気持ちで味わえるのだ。紳士は他の薬もほしがったので、また1つ売ってあげた。これは推理小説をすべて忘れてしまう薬で、どんな推理小説も新鮮な気持ちで味わえるようになるのだ。紳士はまた薬を欲しがったが、エフ博士は他の薬はまだ早いという。しかし、どうしても欲しいので紳士は博士の家から薬を盗んでしまったのだ。エフ博士が急いで紳士の家に向かうと紳士は妻を口説いていた。この薬は女の人との記憶をすべて失ってしまうものだった。


「服を着たゾウ」 動物園にいるゾウがある催眠術師がふざけてかけた暗示により、人間と思って行動を始める。人間と思っているので檻の鍵を開け、そして閉めて街に繰り出した。ある洋服屋で洋服を特注で作ってもらった。お金は洋服屋の紹介で芸能プロダクションに務めて払うことにした。人間として、ゾウの役をやろうということだった。お金もたまり始めたので読書をして勉強をし、遊園地やおもちゃ会社の経営をした。良心的に一生懸命やり経営は成功し、さらに会社は大きくなっていった。あるテレビ番組で成功のひけつをきかれると、自分の心の奥にある自分は人間だという声に従い、人間なら何をすべきかを勉強し、常にそれに向かって努力していたからですと答えた。質問者は自分が人間だとちゃんと考えたことがなかった。このように人間はみんな催眠術で人間だと暗示をかけてもらったほうがいいのかもしれない。


「マイ国家」 青年は銀行の外廻りで「真井国三」の家にたまたま寄った。玄関でも返事がないので、事故などのことも考え居間に向かう。しかし、そこに主人はいたので、謝った後銀行の営業を始める。主人はそれよりもお酒をすすめてきた。相手に合わすほうがいいので、青年も何杯か飲んでしまった。また今度うかがおうと青年が帰ろうとすると、体がうごかない。主人がしびれ薬を酒に仕込んでおいたのだ。主人は青年に対してわが国に不法侵入してきたので逮捕したという。主人はここが独立国だと言い、その理由を領土、国民、政治機構などにおいて説明していく。国ができた神話までつくっていた。青年を捕虜としその開放のために、外務省に電話をつなぎ青年に説明させたが、青年は相手にしてもらえなかった。そして、処刑が決まってしまい、青年は泣いた後に狂ってしまった。このために主人は処刑は無理だと判断し青年を外に放り出してしまう。それ以来、青年は自分の国家についてのことばかり考えていて妄想して、入院させられてしまった。


感想・レビュー
ショート・ショートというジャンルはどうやら僕は好きなようです。どうしてこんなに短いのに、ちゃんと話としてまとまるのだろうと思う。短いのにちゃんと予想を裏切るオチがあるのがすごい。1つ1つのショートについてあらすじを書いたが無駄な気がする。ユーモアにあふれていて、でも時には人間としてどうなのかという疑問や教訓的なものを教えてくれる。
1番好きな話は「宿命」で、1番考えさせられた話は「服を着たゾウ」だった。