QED 東照宮の怨 高田崇史

QED 東照宮の怨 (講談社ノベルス)

QED 東照宮の怨 (講談社ノベルス)


きっかけ
QEDシリーズの1巻、2巻を読んでいたので買いました。シリーズ物になるとつい揃えたくなるのですが、買ってからこれが4巻目に当たると分かってちょっとがっかり。どうせなら順番どおりに読みたいです。しかし、ミステリーのシリーズ物なので特に前の巻を知らないと困るところがなく、ちゃんと1つの話として読めるところはいい。


ネタバレ・あらすじ
一応話は、薬剤師の棚旗奈々の目線で進んで行く。警察の動向や情報が岩築警部の警部の目線で書かれ、それを小松崎良平が聞いてきたという体裁で語られる部分もある。


薬剤師の棚橋奈々は、小中学校の環境衛生検査を行う「学校薬剤師会」の親睦旅行で日光に旅行に行く。紅葉狩りなどを楽しんだ後、日光東照宮を訪れると、漢方薬局に務めている奈々の大学の先輩の桑原崇と同じ大学で今はジャーナリストの小松崎良平を発見して一緒に行動することになる。崇と小松崎は、三十六歌仙絵について調べるためにここまで来た。三十六歌仙絵を調べる理由は、小松崎が担当していた記事の取材相手の八重垣リゾート社長の八重垣俊介が、滅多突きの状態で殺されてしまったのだ。この八重垣俊介が三十六歌仙絵の1枚を所有していて、さらにこの絵が盗まれていた。そして、八重垣俊介の最後の一言が「かごめ」だった。


崇は奈々に日光東照宮の歴史や秘密についていろいろと説明する。「三猿」「山王権現」「北極星」「薬師如来」「摩多羅神」「北斗七星」いろいろと見立てて、呪をかけるために執拗に配置に気をつけたりしている。わざと日光東照宮を完成させないことで、破壊からも免れるようにしている。この呪いは徳川家康と天海によるものだった。それは徳川家康天皇と同じくらい、又はそれよりも強い権力を持つようにしていた。そして、日光東照宮を調べていると、そこに飾られている三十六歌仙絵は本物とは歌が違っているということだった。これは、天皇が送ったものだが、これにより天皇の送ったものを破壊することができなかったので、日光東照宮戊辰戦争などでも攻撃を受けたりしていない。


次に2つ目の殺人事件が起きる。八重垣リゾートのバックの花坊不動産会長の花坊才蔵が、手足を切られて殺された。さらに花坊の持つ歌仙絵も盗まれていた。この事件から八重垣俊介の息子の慶一と娘の優歌子が行方不明になっている。刑事の岩築や松丸により、八重垣の歌仙絵が偽物であることが判明する。さらに偽物と見抜いていた安田滋美の歌仙絵も盗まれていたことが判明する。この安田滋美は実は優歌子の本当の母親だった。


その後、行方不明の慶一と優歌子が発見される。慶一は殺されていて、優歌子も重体だった。そこに盗まれた歌仙絵も一緒におかれていたので、仲間割れではないかということになる。しかし、崇が今回の歌仙絵の盗難事件と殺人事件の真相が日光東照宮の呪のせいだと看破する。優歌子がまた狙われる可能性があるので、その真相を関係者全員の前で話す。


犯人は松丸刑事だった。日光東照宮は実は、薬師如来ではなく日光菩薩、出羽の月山を月光菩薩そして、会津薬師如来に見立てたというのが、天海の本当の呪だったのだ。そのラインを切るように八重垣がホテルを建てようとしていたので、それを阻止するために、歌仙絵盗難をカモフラージュにして殺人を犯し、ホテル建設を阻止しようとしたのだった。出身地の会津の霊的守護が解かれるのが嫌だったのだ。八重垣と言う名前も何重もの囲いの意味だし、バックの花坊才蔵は歳翁ということでさらに道をふさいでしまう名前だったのだ。かごめというダイイングメッセージは、「華甲め」で華甲とは61歳のことで花坊才蔵を表している。歌仙絵が偽物と知らされたことに対する花坊才蔵を恨む言葉だった。


かごめの歌の謎解きもする。これは遊女が本当は外に出たいことを歌ったものだと言う説がある。しかし、今回の日光東照宮のいろいろなことを重ね合わせると、天皇家徳川幕府のせいで外にもでれない、そのうえ徳川家が天皇家の中にまで無理矢理入ってくるともとれるとのこと。後ろの正面だあれの答えは、江戸町の後ろの正面で日光東照宮という意味らしい。


感想・レビュー
シリーズ中で今回は、日光東照宮の謎がちゃんと事件に直接つながっていたと思う。動機は理解しにくいかもしれないけれど、風水や縁起をほんとうに信じている人もいるのだ。狂信的な人たちは何をするかわからない。ただ「華甲め」は厳しいと思う。それこそ「花坊め」と言ったほうが自然だと思う。そこはミステリーらしく謎をつくったんだろう。


それにしても、日光東照宮の謎やかごめ歌について書きたいだけのイメージを受けます。確かにこの謎解きは強引かなと思う部分もあるけれど、本当のことを正直にしゃべれない世の中もあるし、本当ことは知られてはいけないという呪もある。いろんな場所をラインでつなぐとか、風水的に位置や名前にもいろんな文字を隠したりと昔の人は本当に想像力豊かだと思います。