黒い太陽 新堂冬樹

黒い太陽

黒い太陽


きっかけ
友人がドラマを見て相当はまったようで、原作として薦められて読みました。そういうわけなので、100円じゃなかった気がします。時期的にももう100円で売っている中古本屋は存在すると思いますが、出回っている量が少ないと思います。


ネタバレ・あらすじ
主人公は立花篤、19歳。母親の駆け落ちのショックで酒浸りになり、脳出血を起こし植物人間になって入院している父の真一の入院費などを稼ぐために、軽蔑しているキャバクラ、ミントキャンディでボーイとして働いている。その店のナンバー1キャストの千鶴に恋心を抱いている。千鶴も母親の借金を返すために訳ありで、キャストとして働いている。同じ境遇もあり、お互いにひかれあっているがキャストとボーイの関係を越えない範囲で会ったりしている。


ある日、立花は千鶴の胸を無理矢理触ろうとした客を殴りつけてしまう。それにより1週間の謹慎をくらう。ミントキャンディのオーナーにして風俗王の藤堂は、自分に似ていてこの世界でしか生きられない立花を将来の社長候補として教育することにする。謹慎期間に性風俗やトップの売り上げのキャバクラを廻らせたり、ミントキャンディの客の好みのデータを暗記させるなどして勉強させる。そして、謹慎が解けたと共にホール長をまかされるようになり、キャスト3人の管理もするようになる。客のヘルプにどのキャストをつけるかなどを正しく見抜くが、先輩たちの嫉妬により妨害にあう。


その頃から千鶴の立花に対する態度が変わり始めた。立花がホール長として有能になっていくのと同時に、藤堂のように変化していくことに耐えられなかったのだ。立花も自分の変化にとまどうが、お金を溜めて千鶴を幸せにすることだけ考えていた。しかし、千鶴は藤堂と男と女の関係で、立花はその藤堂の足元にも及ばないという。その言葉にショックを受け、立花は藤堂と同等になるためにミントキャンディをやめる。


立花は自分でキャバクラをはじめるための作戦にでる。まずはライバル店のピーチクラブにボーイとして勤め、ミントキャンディ時代の自分が受け持って大躍進をとげたキャストの恵美を引き抜いた。恵美はピーチクラブのナンバー1になったが、立花はあえて自分は無能であるようにみせかけた。恵美と恋人同士になり、キャバクラの開店資金を溜めた。開店資金が溜まった頃に、次の段階に入る。ミントキャンディのナンバー2の奈緒を引き抜き、経理の得意なチーフマネージャだった大滝を引き抜いた。さらにスカウトをして梨花という逸材を手に入れる。キャバクラの店は恵美のお客から保証金の後払いなどの良い条件で優遇してもらった。


立花は新しい店フェニックスを開店する。恵美はナンバー1で、初心者の梨花、笑子も頭角を現し始める。初めの1ヶ月を順調にすべりだしたが、それから暗雲が立ち込める。不動産屋の情報によると、向かいに藤堂がキャバクラを出すつもりらしい。それを阻止するためにキャストの百合香をテナントの持ち主に送り、体で虜にして契約を破棄させようとしたが失敗し、ホワイトイブがオープンしてしまう。そこには藤堂グループのナンバー1キャバクラ嬢の冬海と天才ホール長の長瀬が店長として送り込まれた。藤堂が本気で立花を潰しに来たのだ。さらに梨花と恵美の仲が悪くなり、梨香が恵美と一緒に働くのが嫌だと言いはじめる。2ヶ月目にしてナンバー1の座についたのをいいことに恵美か自分のどちらかをやめさせろと無理な要求をしてくる。今後のことも考え恵美には店をやめてもらった。ホワイトイブに客が入り始めた頃に、なんと梨花がホワイトイブに引き抜かれてしまった。恵美を店に戻そうとするが、藤堂により梨花とやり取りなどを全て吹き込まれ恵美は実家に戻ってしまう。立花を半年で潰すと断言した藤堂の作戦だった。店を建て直すために料金を下げたり、衣装を露出の多いものに変えるが裏目にでてしまう。ところが、現在のナンバー1の笑子の応援と恋人になることで笑子の溜めてきたお金を使い反撃にでる。


冬海を引き抜きにかかるが、金額が安いとつっぱねられる。しかし、冬海は藤堂に恋をしていて、藤堂は千鶴のことしか見ていない。千鶴は立花のことが本当は好きで、藤堂ともうかかわらせない為に藤堂と付き合っているという嘘を言っていたのだと言う。千鶴は立花が誘えば動くので、その千鶴をキャバクラからやめさせるなら冬海は立花の店に移ってもいいという条件を出す。その条件を飲んで千鶴をフェニックスに引き抜く。さらに梨花は父親にキャバクラで働いていることをばらし、ホワイトイブのナンバー2になっていた梨花をやめさせる。そして、千鶴をやめさせ冬香をフェニックスで働かせたことによって、自分の店のナンバー1,2をやめさせられたことと同じことをやり返し、復讐を成功させる。そして、フェニックスも売り上げを伸ばしていく。


藤堂の鼻を明かして、勝ったといえるところだったが、百合香が藤堂の手に渡り、売春を斡旋したということで立花は警察につかまってしまい、フェニックスも閉めざるをえなくなってしまった。藤堂が半年で立花を潰すというは、現実となった。お互いに痛み分けに終わった。しかし、立花には漆黒の太陽がはっきりと見えている。


感想・レビュー
キャバクラの内情についてかなり詳しくリアルに書いてある。キャスト同士の嫉妬や駆け引きなんかも本当にあるような話なのでこわい。ドラマはちゃんと見ていないのだけど、やっぱりちょっと内容が違うような気がした。ドラマでは立花が殴られていたような場面があったけど、小説では暴力的な場面はほとんどなかった。ラストも違う、ドラマは警察に捕まるようなことはなかったような。


新堂冬樹はこういう現実の裏の部分を書くのがうまいと思う。人間の闇や暗い部分、不幸を書くのが抜群。しかし、白新堂と呼ばれる作品郡はどうかわからないが、この黒い太陽では純愛をうまく表現できていないと思う。表に現さない恋愛感情もあるが、本当は熱い気持ちがあるというのが伝わってこない。でも、この作品の見所は恋愛じゃないからいいはず。